NIL (にる)

『VR家族会議』

VRインスタレーション

サイズ可変


20XX年XX月XX日、私は発狂した。

そしてその翌日、家族会議が開かれた。家族から提示された選択肢は2択。「精神病院に行くか、お祓いに行くか。」しかし今でも振り返って時々思うことがある。その2択は本当に正しかったのか?と。精神病院に行けば「患者」として扱われ、お祓いに行けば「信者」として扱われる。そしてそれぞれの方法で適切な治療が施されるのだろう。確かにそれらの属性や治療は得体の知れない発狂者に対して少しだけ安心感を与えてくれる。つまり家族会議とはその決断を迫るための儀式空間であり、家族から外れてしまったナニモノかが再び家族として受け入れられるためにはそれらの儀式を洗礼として受け入れるしかない。

今回制作したVRの没入空間は一連の発狂体験と家族会議に対応しており、観客=プレイヤーは布団に寝てVRヘッドセットを被る=幽体離脱しながらそれらの体験を追体験することになる。周囲を覆う全天球鏡像映像は家から海岸まで、つまり儀式を行おうとした際の経路を辿り直した映像を元にしており、配置されているキャラや物体は発狂時のエピソードを元に制作したものだ。またその全天球の外側はさらに全天球の家族会議風景で覆われており、そこから聴こえてくる噛み合わない会話は発狂体験すら超える地獄を体現している。最終的に閉鎖された家族会議で迫られる2択は家族でいるために「患者」になるか「信者」になるかを迫るものだが、その答えとしてはヘッドセットを外す=没入空間から脱出して第3の選択肢を取ること以外に道はないように思うのだ。